25.1 クラスタワークロードマイグレーションの計画

PlateSpin環境でアクティブノードの検出が有効になっている(デフォルト)場合、Windowsクラスタのマイグレーションは、仮想の1ノードクラスタにストリームされるアクティブノード上の変更による増分レプリケーションで実現できます。アクティブノードの検出を無効にした場合、Windowsクラスタの各ノードはスタンドアロンノードとして検出およびマイグレートすることができます。

Windowsクラスタをマイグレーション対象として設定する前に、ご使用の環境で前提条件が満たされていること、およびクラスタワークロードをマイグレートするための条件を理解していることを確認してください。

25.1.1 クラスタマイグレーションの要件

クラスタマイグレーションのサポート範囲は、表 25-1に記載されている条件に従う必要があります。PlateSpin環境でクラスタのマイグレーションを設定する際には次の要件を検討してください。

表 25-1 クラスタのマイグレーションの要件

要件

説明

Windowsクラスタとしてのアクティブノードの検出

PlateSpinグローバル環境設定DiscoverActiveNodeAsWindowsClusterは、Windowsクラスタをクラスタとしてマイグレートするか、別個のスタンドアロンマシンとしてマイグレートするかどうかを判断します。

  • True (デフォルト): アクティブノードがWindowsクラスタとして検出されます。

  • False: 個々のノードはスタンドアロンマシンとして検出できます。

詳細については、セクション 25.2, Windowsアクティブノードの検出の設定を参照してください。

リソース名の検索値

PlateSpinグローバル環境設定MicrosoftClusterIPAddressNamesは、PlateSpin環境で検出可能なクラスタリソース名を判断します。共有クラスタのIPアドレスリソース名を、クラスタ上の他のIPアドレスリソース名から区別するため、検索値を指定する必要があります。

詳細については、セクション 25.4, リソース名の検索値の追加を参照してください。

Windowsクラスタモード

PlateSpinグローバル環境設定WindowsClusterModeは、増分レプリケーションのブロックベースのデータ転送方法を判断します。

  • デフォルト: ドライバレス同期。

  • SingleNodeBBT: ドライバベースのブロックベース転送。

次を参照してください。

アクティブノードのホスト名またはIPアドレス

ワークロードの追加操作を実行する場合、クラスタのアクティブノードのホスト名またはIPアドレスを指定する必要があります。Microsoftによるセキュリティ変更のため、仮想クラスタ名(つまり、共有クラスタIPアドレス)を使用してWindowsクラスタを検出することはできなくなりました。

解決可能なホスト名

PlateSpin Serverは、クラスタの各ノードのホスト名をIPアドレスで解決できる必要があります。

メモ:IPアドレスによってホスト名を解決するには、DNS前方向検索および後方向検索が必要です。

クォーラムリソース

クラスタのクォーラムリソースは、マイグレートされるクラスタのリソースグループ(サービス)と同じノードにある必要があります。

クラスタノードの類似性

デフォルトのWindowsクラスタモードでは、ノードが類似している場合、アクティブになる任意のノードからドライブレス同期を続行できます。それらが一致しない場合、元々検出されていたアクティブノードでのみレプリケーションが発生する可能性があります。

詳細については、クラスタノードの類似性を参照してください。

PowerShell 2.0

Windows PowerShell 2.0 を、クラスタの各ノードにインストールする必要があります。

25.1.2 クラスタ用のブロックベース転送

クラスタ用のブロックベース転送は、スタンドアロンサーバ用とは異なる方法で動作します。最初のレプリケーションでは、完全なコピー(フル)が作成されるか、またはクラスタのアクティブノード上で実行されるドライバレスの同期方法が使用されます。後続の増分レプリケーションでは、ブロックベースのデータ転送でドライブレスの方法またはドラバベースの方法を使用できます。

メモ:PlateSpin Migrateでは、クラスタ用のファイルベース転送がサポートされていません。

PlateSpinグローバル環境設定WindowsClusterModeは、増分レプリケーションのブロックベースのデータ転送方法を判断します。

  • デフォルト: 現在のアクティブノード上でMD5ベースレプリケーションを使用したドライブレス同期

  • SingleNodeBBT: 元々検出されていたアクティブノード上にインストールされたBBTドライバを使用したドライバベースの同期

どちらの方法も、ファイバチャネルSANおよびiSCSI SAN上のローカルストレージと共有ストレージのブロックレベルレプリケーションをサポートします。

表 25-2では、2つの方法について説明および比較しています。

表 25-2 増分レプリケーション用のブロックベースのデータ転送方法の比較

検討事項

デフォルトBBT

シングルノードBBT

データ転送方法

現在のアクティブノード上でMD5ベースレプリケーションとともにドライブレス同期を使用します。

元々検出されていたアクティブノード上にインストールされたBBTドライバを使用します。

パフォーマンス

潜在的に低速な増分レプリケーション。

増分レプリケーションのパフォーマンスが大幅に向上します。

サポートされるWindowsクラスタ

サポートされているWindows Serverクラスタと連携動作します。

Windows Server 2008 R2以降と連携動作します。

他のサポートされるWindowsクラスタでは、レプリケーションにドライバレス同期方法が使用されます。

ドライバ

  • ドライバレス。インストールするBBTドライバはありません。

  • ソースクラスタノード上で再起動は必要ありません。

  • Migrate Agentユーティリティを使用して、クラスタの元々検出されていたアクティブノード上にBBTドライバをインストールします。

  • ドライバを適用するためにノードを再起動します。これにより、クラスタ内の別のノードへのフェールオーバーが開始します。再起動後、元々検出されていたノードを再びアクティブノードにします。

  • レプリケーションを実行し、シングルノードブロック転送を使用するには、同じノードがアクティブなままである必要があります。

  • BBTドライバをインストールした後で、ドライバベースの増分レプリケーションを開始するには、完全レプリケーションまたはドライバレス増分レプリケーションのいずれかを実行する必要があります。

最初の増分レプリケーション

アクティブノード上でドライバレス同期を使用します。

BBTドライバがインストールされた後で完全レプリケーションが完了した場合、元々検出されていたアクティブノード上でドライバベースのブロックベース転送を使用します。

それ以外の場合、元々検出されていたアクティブノード上でドライバレス同期を使用します。

後続の増分レプリケーション

アクティブノード上でドライバレス同期を使用します。

元々検出されていたアクティブノード上でドライバベースのブロックベース転送を使用します。

クラスタがノードを切り替える場合、元々アクティブなノードが再びアクティブになった後で、最初の増分レプリケーションにドライバレス同期方法が使用されます。

詳細については、レプリケーションでのクラスタノードのフェールオーバーの影響を参照してください。

25.1.3 レプリケーションでのクラスタノードのフェールオーバーの影響

表 25-3では、レプリケーションでのクラスタノードフェールオーバーの影響と、Migrate管理者による実行が必要なアクションについて説明します。

表 25-3 レプリケーションでのクラスタノードのフェールオーバーの影響

クラスタノードフェールオーバーまたはフェールバック

デフォルトBBT

シングルノードBBT

最初の完全レプリケーション時にクラスタノードフェールオーバーが発生する

レプリケーションが失敗します。最初の完全レプリケーションは、クラスタノードフェールオーバーなしで正常に完了する必要があります。

  1. Migrateからクラスタを削除します。

  2. (オプション)元々検出されていたアクティブノードを再びアクティブノードにします。

  3. アクティブノードを使用してクラスタを再度追加します。

  4. 最初の完全レプリケーションを再度実行します。

後続の完全レプリケーションまたは後続の増分レプリケーション時にクラスタノードフェールオーバーが発生する

レプリケーションコマンドが中止され、レプリケーションを再実行する必要があることを示すメッセージが表示されます。

新しいアクティブノードのプロファイルが、障害の発生したアクティブノードと同様の場合は、マイグレーションコントラクトが有効なままになります。

  1. 現在のアクティブノード上でレプリケーションを再実行します。

新しいアクティブノードのプロファイルが、障害が発生したアクティブノードと同様ではない場合は、マイグレーションコントラクトは元々アクティブなノード上でのみ有効になります。

  1. 元々検出されていたアクティブノードを再びアクティブノードにします。

  2. アクティブノード上でレプリケーションを再実行します。

レプリケーションコマンドが中止され、レプリケーションを再実行する必要があることを示すメッセージが表示されます。元々検出されていたアクティブノード上でのみマイグレーションコントラクトが有効です。

  1. 元々検出されていたアクティブノードを再びアクティブノードにします。

  2. アクティブノード上でレプリケーションを再実行します。

クラスタフェールオーバー/フェールバックイベント後のこの最初の増分レプリケーションでは、自動的にドライバレス同期が使用されます。後続の増分レプリケーションではシングルノードBBTで指定されているように、ブロックベースドライバが使用されます。

レプリケーション間でクラスタノードフェールオーバーが発生する

新しいアクティブノードのプロファイルが、障害が発生したアクティブノードと同様な場合、次回の増分レプリケーションではマイグレーションコントラクトの処理がスケジュールどおりに続行されます。それ以外の場合は、次回の増分レプリケーションコマンドが失敗します。

スケジュール済みの増分レプリケーションが失敗する場合:

  1. 元々検出されていたアクティブノードを再びアクティブノードにします。

  2. 増分レプリケーションを実行します。

アクティブノードがレプリケーション間で切り替わる場合は増分レプリケーションが失敗します。

  1. 元々検出されていたアクティブノードが再びアクティブノードになっていることを確認します。

  2. 増分レプリケーションを実行します。

クラスタフェールオーバー/フェールバックイベント後のこの最初の増分レプリケーションでは、自動的にドライバレス同期が使用されます。後続の増分レプリケーションではシングルノードBBTで指定されているように、ブロックベースドライバが使用されます。

25.1.4 クラスタノードの類似性

デフォルトのWindowsクラスタモードの場合、レプリケーションプロセスでの中断を回避するため、クラスタノードが類似プロファイルを持っている必要があります。クラスタノードのプロファイルは、次のすべての条件を満たす場合、類似していると見なされます。

  • ノードのローカルボリューム(システムボリュームおよびシステム予約済みボリューム)のシリアル番号は各クラスタノードで同一である必要があります。

    メモ:カスタマイズされたボリュームマネージャユーティリティを使用して、ローカルボリュームのシリアル番号をクラスタの各ノードで一致するように変更します。詳細については、クラスタノードにおけるローカルストレージのシリアル番号の同期を参照してください。

    クラスタの各ノードのローカルボリュームでシリアル番号が異なる場合、クラスタノードでのフェールオーバーの実行後にレプリケーションを実行できません。たとえば、クラスタノードでのフェールオーバーの実行時には、アクティブノードであるノード1に障害が発生し、クラスタソフトウェアによってノード2がアクティブノードに設定されます。2つのノードのローカルドライブでシリアル番号が異なる場合、ワークロードの次回のレプリケーションコマンドが失敗します。

  • 各ノードが同じ数のボリュームを持っている必要があります。

  • 各ボリュームが各ノードでまったく同じサイズである必要があります。

  • 各ノードがまったく同数のネットワーク接続を持っている必要があります。

25.1.5 アクティブノードのマイグレーションのセットアップ

Windowsクラスタのマイグレーションを設定するには、通常のワークロードマイグレーションワークフローに従います。クラスタのアクティブノードのホスト名またはIPアドレスを指定してください。

25.1.6 (詳細、P2Vクラスタマイグレーション)ターゲットVMware VM上のRDMディスク

PlateSpin Migrateは、各ターゲットVMノードがVMwareクラスタ内の異なるホストに存在する場合に、ターゲットVM上の共有RDM (ローデバイスマッピング)ディスク(FC SAN)を使用してWindows Serverフェールオーバークラスタ(WSFC)をVMwareへ半自動でマイグレートできます。詳細については、RDMディスクを使用するVMware VMへのWindowsクラスタの高度なマイグレーションを参照してください。